言葉の壁
今考えるとBTSは日本の年末の歌番組にたくさん出てくれていたのだなぁと思う。
「あ、またBTSや」と、多くの出演アーティストの中からBTSを意識するようになった。
スピーチのあのお兄さんをRMだと認識したものの、もちろんその他のメンバーは失礼ながら誰が誰か分かっていない。
新型コロナウイルスの影響でもちろんリモート出演なのだけれど、彼らのステージはいつもカラフルで凝ったセットからのパフォーマンスだった。
日本の歌番組がとても殺風景だなと感じだ。
今までリスニングに費やしていた時間を使って、気付いたらiTunesでダウンロードしたdynamiteを聴いている。気付いたらTwitterで情報を探している。気付いたらYouTubeを見てしまう。
この頃の私の心の動揺っぷりはなかった。
私は現在育休中で生後半年の赤ちゃんがいて、この育休は英語の勉強に費やす!と心に決めていたからだ。
英語の勉強に繋がらないものは出来るだけ排除!
日本のドラマ禁止!
iPhoneの設定は英語!
毎日何があっても5分は勉強!
陣痛の間も単語帳を握りしめていた。
なのに?え?アイドル?
顔の区別がつきそうになるのをためらい、見るのを控え。
本名、あだ名、芸名といくつもある名前を覚えてしまったとき、もう私はあとには戻れんだろうなと悟った。
そうは言っても私は英語学習者で、昔から英語だけが大好きだ。
大学ではフランス語を専攻していたが何の身にもならずに終わった。
興味がないことは興味を持てない。
無限dynamiteリピートにもそろそろ満足してきたころ、誰かのTweetでFIREという曲を知った。
そのTweetはたしか歌詞が好きだという内容だった気がするけれど、初めてこのパフォーマンスを見たとき雷に打たれたような気がした。
正直に言うと私は今まであらゆる韓流というものを拒んでいたところがあった。
韓国という国に何か特別な感情があるというわけでもなく、ただ単に小学生のころの冬ソナブームに狂う大人達を見ていて「韓流=とってもミーハー」みたいなイメージがあったから。
そしてK–POPっぽい音楽も苦手だった。
そもそも聴いてみようとも思ったことがなかった。
一体何回このYouTubeを見ているだろう。
最初は歌詞の日本語訳を見て「ほうほう」と思ったんだけれど、歌詞の意味は置いておいて、とにかくこの歌の全てがめちゃくちゃ好きになって、何を歌っているかもわからないのに毎日聴いている。
これは私にとってはすごいことで。
大したレベルでもないけれど、言語学習者なりの意地がある。
『訳を通さず理解したい』
細かいニュアンスの違いを理解したい。
日本人なら英語教育の賜物でレベルに差はあれど英語ならなんとなくは分かるはず。
'cry'なら泣くやな、'smile'なら笑うやな、といろんなヒントを繋ぎ合わせて曲のぼんやりとした輪郭くらいは予測できるだろう。
ところが韓国語は私にとっては全くの未知で、バラードやな~激しい曲やな~という情報とサビの少しの英語の歌詞しかわからないという事態。
BTSを好きになりかけて必死で無駄な抵抗をしていたころは、とはいえ言語という最後の砦があるからいっときのブームで終わるだろうと高を括っていた。
あの頃の私に言いたい。
あなた、ファンクラブにはいるんだよ?
ハングルだって読めるようになるんだよ。
ここに来るまで、4ヶ月である。